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海外広告の基準値?KPI設定方法と弊社の実績データから見る業種別パフォーマンス
- 2025.08.05
- 海外リスティング広告

- 目次
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- 海外広告に「絶対的な基準値」は存在しない?
- 「基準値」より重要。自社の目標ROASを設定する逆算思考
- 業種別・媒体別の事例
「海外向けに広告配信を始めたものの、この獲得単価(CPA)は高いのか、安いのか?」「広告費用対効果(ROAS)は一体いくらを目指せばいいんだ…」
海外マーケティングに挑戦する多くの担当者様が、この共通の壁にぶつかります。国内の相場観が通用しない市場で、自社の広告パフォーマンスを測る「ものさし」がない手探りの状態は、非常にもどかしいものです。
よく「海外広告の基準値」が求められますが、あらゆるビジネスに共通する「絶対的な基準値」は存在しません。しかし、弊社はこれまで数多くのクライアント様をご支援してきた実績があり、その膨大なデータに基づいた確かな「参考指標」を保有しています。この記事では、その弊社の実績データを公開しつつ、外部の数値に振り回されずに自社だけの最適な「目標値を設定する方法」を解説します。
この記事は次のような人におすすめ!
- 海外向けにWeb広告を始めたものの、CPAやROASの目標設定に悩んでいるご担当者様
- 自社の広告パフォーマンスが良いのか悪いのか、客観的な判断基準や他社の参考値が知りたい方
海外広告に「絶対的な基準値」は存在しない?
弊社の実績データをご紹介する前に、「これをクリアすればOK」という魔法の数値が存在しないのか、その理由を理解しておくことが非常に重要です。海外広告のパフォーマンスは、主に以下の3つの要因が複雑に絡み合って決まります。
要因1:
国・地域によるCPCの違い 最も大きな変動要因は、配信する国や地域です。例えば、欧米諸国のCPCは、アジア諸国と比較して2〜3倍、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。 これは、各国広告市場の競争環境の違いに起因します。
要因2:
業界・商材の競争環境と価格帯 これは国内広告とも共通しますが、業界や扱う商材によっても数値は大きく変動します。数1000円の日用品を売るビジネスと、数10万円の高級ブランド品を売るビジネスでは、許容できるROASが異なります。
要因3:
広告媒体と目的・広告費 Googleの検索広告、Meta(Facebook, Instagram)のSNS広告など、どの媒体を選ぶかによっても単価は大きく異なります。さらに、「認知度向上」か「商品販売」か、広告の目的や広告費用によっても見るべき指標や結果は変わります。
「基準値」より重要。自社の目標ROASを設定する逆算思考
外部の数値を参考にする前に、自社のビジネスが利益を出せる分岐点、すなわち「目標ROAS」を把握することが最優先です。ROAS(広告費用対効果)とは、広告費に対してどれだけの売上を回収できたかを示す、事業の収益性を測る上で欠かせない指標です。
目標ROASの計算方法
ROASの目標設定には、広告を「短期的な販促」と見るか、「未来への投資」と見るかで2つの考え方があります。
- 初回購入で利益を出す「損益分岐ROAS」
広告単体で利益を出すための基準で、粗利率から算出します。
損益分岐ROAS (%) = 1 ÷ 粗利率
例えば粗利率40%なら、ROAS 250%(=1÷0.4)が短期的な黒字化のラインです。
- LTVで考える「投資としての許容ROAS」
広告の重要な役割は「新規顧客の獲得」です。そのため、LTV(顧客生涯価値)を考慮し、初回購入時に許容できるROASの下限値を把握することで、将来の利益を見越した戦略的な投資判断が可能になります。
LTVを加味した許容ROASは、以下の式で算出できます。
許容ROAS (%)=LTV×粗利率 ×100
初回購入単価
この計算式は、「顧客一人当たりに生涯で投下できる広告費の総額(LTV × 粗利率)に対して、初回購入の売上がどれくらいの割合か」を示しています。この割合が、初回購入時に許容できるROASの下限値となります。
目標ROASから各KPIへの逆算
設定した目標ROAS(または許容ROAS)が決まれば、以下の式から逆算して「目指すべきCPC」「CVR」などを算出できます。これにより、自社のビジネスゴールに基づいた具体的なKPI設定が可能になります。
業種別・媒体別の事例
ここからは、3つの異なる業種の事例をご紹介します。媒体ごとのパフォーマンスの違いも参考に、自社に合った戦略のヒントを見つけてください。弊社実績をもとに算出した基準値ですが、実際の結果は商材ごとに変わる場合も大いにあるため、あくまで参考値としてご認識ください。
事例:ホーム・生活雑貨
Google広告とMeta広告でそれぞれ異なる特性の成果が見られました。購入意欲の高いユーザーを狙うGoogle広告と、潜在層へ広くアプローチするMeta広告の役割の違いが、指標に表れました。
■ Google広告(検索広告・Pmaxなど)
- パフォーマンス概要 購入意欲の高いユーザーを的確に捉え、顕在層の獲得において非常に高い費用対効果です。ROASは好調時に600%を超えるなど、直接的な売上への貢献が大きいことが特徴です。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価): 50~100円台
- CVR(購入率): 0.8~2.5%
- ROAS(広告費用対効果): 400% ~ 600%超
■ Meta広告(Facebook, Instagramなど)
- パフォーマンス概要 Google広告よりも安価なクリック単価で、幅広い潜在層へのアプローチが可能です。ブランドの認知拡大から将来的な売上に繋がる重要な役割を担っていることが分かります。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価): 40~80円台
- CVR(購入率): 1%未満
- ROAS(広告費用対効果): 200% ~ 400%台
事例:伝統工芸品
高単価・高付加価値な商材である伝統工芸品の事例です。Google広告、Meta広告ともに、それぞれの媒体特性を活かして安定した費用対効果を上げています。
■ Google広告
- パフォーマンス概要 購入意欲の高いユーザーを検索で捉え、CVRは約1%と堅調に推移しています。高単価な商材のため、数十円台のCPCでもROASは300%前後となり、安定した成果を創出しています。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価): 60~90円台
- CVR(購入率): 1%前後
- ROAS(広告費用対効果):300~400%
■ Meta広告
- パフォーマンス概要 商品の持つ世界観やストーリーをビジュアルで訴求することが奏功しました。Google広告より安価なCPCでユーザーにリーチしつつ、CVRも1%弱と健闘しており、費用対効果の高い結果に繋がっています。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価): 50~80円台
- CVR(購入率): 1%前後
- ROAS(広告費用対効果): 300%前後
事例:ファッション・アパレル
競争が激しく、ビジュアルが重要なアパレルカテゴリの事例です。Google広告とMeta広告、それぞれのプラットフォームの特性を活かして、非常に高い費用対効果を実現しています。
■ Google広告
- 弊社の事例ではクリック単価を安価に抑えることができています。競争の激しいキーワードを避け、ロングテールキーワードに広告配信を特化しているためと考えられます。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価):20~50円台
- CVR(購入率): 1%未満
- ROAS(広告費用対効果): 350~1000%超
■ Meta広告(Facebook, Instagramなど)
- パフォーマンス概要 アパレルと親和性の高いビジュアル訴求が奏功し、CVRはGoogle広告を上回る水準の事例もあります。潜在顧客から購買層まで、SNS上で効果的にアプローチできている好事例です。
- 主要指標の目安
- CPC(クリック単価): 50円以下
- CVR(購入率): 1%弱
- ROAS(広告費用対効果): 400%超
まとめ
本記事では、海外広告のCPAやROASについて、弊社の実績データを交えながら、その考え方と目標設定の方法を解説しました。
重要なのは、絶対的な基準値を追い求めるのではなく、まず自社の粗利率やLTVから「目標ROAS」というブレない軸を設定することです。その上で、弊社が提示したような参考指標や、事例に見る媒体ごとの特性を参考に、自社のパフォーマンスを客観的に評価し、改善のサイクルを回していくことが成功の鍵となります。
この記事が、海外マーケティングにおける「ものさし」を作る参考にしてください。
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