海外マーケティングブログ

海外BtoB Webマーケティングが何故必要なのか:展示会依存から脱却し、デジタルでリードを獲得する方法

海外BtoBにおけるWebマーケティングの重要性を表すサムネイル画像。展示会依存の営業モデルから脱却し、SEOやLinkedInなどデジタル施策でリードを獲得する様子を対比的に描いている。

執筆者

長谷川淳一

プロフィール詳細

米国で電子工学の学位取得後、米銀で外国為替のアシスタントディーラー。帰国後、不動産会社の経営、ソフト開発会社の起業等を経て、公的機関で中小企業の海外展開支援に10年間携わる。現在は、世界へボカン株式会社で調査・戦略立案を担当。BtoC、BtoB両方の調査実績。

1.WebマーケティングがBtoBリード獲得に必要な訳

海外向けBtoB事業の成長戦略において、従来の展示会・出張・代理店に依存した高コストな営業モデルだけではなく、SEOコンテンツやデジタル広告等を駆使したデジタル主導モデルに関心を持つ企業様が増えていることを実感しています。それは、私たちが仕事で何かを調べる際、まず行うことが検索であったりすることを考えれば当然のことでしょう。

一度きりのイベントや出稿期限のある広告でしかリードを獲得できない旧来の手法とは異なり、一度作成した良質なデジタルコンテンツは、24時間365日、世界中から見込み客を集め続ける「ストック資産」となります。これにより、顧客獲得コストを長期的に削減し、同時に受注機会を最大化することが可能になります。

実際、近年の調査でもその効果は明確に示されています。例えば、リサーチ、アドバイザリー大手のGartnerが2025年のシンポジウムで発表した資料によれば、マーケ予算の61%がデジタルチャネルに配分(検索・ソーシャル・動画・有料メディア等)されているという結果が出ています。また、ソーシャルメディア管理/分析プラットフォームの提供するSprout Socialの調査でも、B2Bマーケターの89%がLinkedInをリード獲得に利用、62%がリードを獲得していると回答。このように、海外ではWEBマーケティングをリード創出に使うことはもはや常識となっています。

ただ、必要な投資は、短期的な広告費や人的な増員ではなく、この「仕組み」そのものであることを認識する必要があります。

具体的には、ウェブサイトに規格認証、導入事例、技術情報、FAQといった顧客の信頼を勝ち取るための情報を徹底的に充実させ、検索エンジンやLinkedInなどを活用した「常時リード獲得装置」を構築します。そして、ウェブサイトでの行動履歴などから見込み客の関心度を測り、購買意欲が高まった高品質なリード(SQL)のみを営業担当者に引き渡すのです。これにより、営業チームは確度の低い相手に時間を費やすことなく、成果に直結する活動に集中できます。

ただし、いきなり広告に多額の費用を投下するのは得策ではありません。まず、①サイトの信頼性を満点にする②購買意欲の高い検索キーワード(例:「製品名+型番」「競合比較」)に対応する製品ページや専門ページを整備する③営業が即応できる体制を構築する、という土台を固めた上で、初めて広告というアクセルを踏むのが鉄則です。

2. なぜ海外競合は、いち早くWebマーケティングに舵を切るのか

海外BtoB市場において、競合企業がWebマーケティングへ急速にシフトしている様子を示すサムネイル画像。複数のビジネスパーソンがデータ分析やグローバル情報収集を行い、購買プロセスの大部分をデジタルで完結させている場面を描いている。

現代のBtoB購買プロセス、特に海外市場では、顧客自身がオンラインで情報収集を完結させる動きが加速しています。BtoBのマーケティングプラットフォーム企業の6Senseは、2024 Buyer Experience Reportの中で、このような発見を報告しています。

  • B2Bバイヤーは,営業担当者と関わる前に購買プロセスの約70%を進めている。
  • 最初のコンタクトの80%超は,バイヤー側から売り手に発信されている。
  • 初回コンタクト時点で,80%超のバイヤーはすでに“第一候補のベンダー”を持っている。
  • 85%のバイヤーは,営業と接触する前に大枠の購買要件を固めている。

つまり、多くのBtoBバイヤーは、営業担当者がコンタクトする前にすでに何を買うか決めている状態になっているのです。つまり、情報発信ができていないと彼らの選考に漏れてしまう可能性があるということです。この変化に対応できない企業は、深刻なコスト増と機会損失に直面します。

コスト構造の違い:フロー資産 vs ストック資産

展示会や海外出張は、その場限りの効果しか生まない単発型の「フロー資産」です。多額の変動費を要し、イベントが終了すればその効果も途切れてしまいます。一方で、良質な技術記事や導入事例といったデジタルコンテンツは、一度作成すればウェブサイト上で永続的に価値を生み出し続ける「ストック資産」となります。データに基づいた継続的な改善も可能です。米国のマーケティング会社Terakeetが2022年に発表した調査では、オーガニック検索は有料検索より平均で87.4%低い顧客獲得コストで顧客を獲得できると報告しています。コンテンツマーケティングの調査機関CMIが出している2025年レポートの中で、直近12カ月で、B2Bマーケターの87%がコンテンツマーケティングによりブランド認知を生み出し、74%が需要/リードの創出に成功していると答えています。

機会損失:24時間働く競合との差

デジタル接点を持たない企業は、顧客が情報が欲しいと思った「その瞬間」に自社製品の情報を与えることができません。特に、時差のある海外の顧客は、日本企業の営業時間外に情報収集を行うことが多くなります。LeadResponseManagement.orgが行った調査では、最初のコンタクトを5分以内に取ると、1時間経過した場合に比べて、見込み客と繋がる可能性が100倍高くなることがわかりました。デジタル施策を積極的に取り入れている競合他社は、深夜であってもWebフォームやチャットボットでリードを確実に獲得しています。24時間365日稼働するデジタルな仕組みと、迅速なレスポンスこそが、グローバル競争の勝敗を分けるのです。

3. Webマーケティングで売上アップする3つのステージ

Webマーケティングを導入することによって期待できる売上増加は、以下の3つのステージで実現します。

  1. 認知獲得(上流):潜在顧客を引き寄せる 見込み客が自社の課題を解決するために検索するキーワード(例:「精密加工 バリ 対策」「耐熱 接着剤 欧州規格」)に対し、専門性の高い技術ブログやソリューション別の解説ページを用意します。これにより、まだ貴社製品を知らない潜在顧客層にアプローチし、業界の専門家としての信頼を構築します。

  2. 刈り取り(中~下流):購買意欲の高い顧客を捉える 「製品名+型番」や「競合製品との比較」といった、購買意欲が非常に高いキーワードに特化した製品ページの最適化、または専用LP(ランディングページ)を作成します。導入事例や詳細なスペック情報を掲載し、簡易見積もりや問い合わせフォームへスムーズに誘導することで、比較検討段階にある顧客を確実に取り込みます。

  3. 育成(再訪・ナーチャリング):見込み客を優良顧客へ育てる 一度接点を持ったものの、すぐには商談化しない大多数のリードに対し、継続的にフォローします。導入検討の際に役立つチェックリストや、より深い技術情報を提供しながら顧客の関心度を図ります。営業担当者は、ユーザーのアクセス状況によって、SQL(Sales Qualified Lead)だけに集中することで、効率的に商談を進めることができます。

4. Webマーケティングがコストダウンに効く7つの具体的施策

デジタルへの投資は、新たな予算を獲得するのではなく、既存コストを最適化することで捻出可能です。以下の7つの項目を見直すことを提案します。

  1. 展示会の最適化: 大規模な出展回数を減らし、小規模出展とオンラインでの常時集客モデルへ転換します。

  2. 出張の限定: 初回接点や初期ヒアリングはオンライン会議で代替し、案件化後のクロージングなど、重要な局面にのみ出張を絞り込みます。

  3. 代理店マージンの見直し: 本社で一次問い合わせを受け付ける体制を構築し、直販比率を段階的に高めます。これにより、エンドユーザーの生きた需要データを自社に蓄積できます。

  4. SEOコンテンツの資産化: 広告費ゼロでリードを生み出し続ける技術記事や導入事例は、最もROIの高い営業資産となります。

  5. MA/CRMによる歩留まり改善: 放置されがちなリードをMAで自動的にフォローし、機会損失を防ぎます。CRMの自動化ツール導入は、一般的に5.4倍のROI(544%) をもたらすと報告されています。

  6. 問い合わせ対応の標準化: よくある質問への回答をFAQページや自己診断フォームとして整備し、営業リソースを浪費する定型的な問い合わせを削減します。

  7. 計測基盤の統合: Web、広告、MA/CRMのデータを一元管理し、ROIやCACをリアルタイムに可視化。これにより、迅速な改善活動と経営層への的確な報告が可能になります。

5. Webマーケティングの実行計画とは

BtoB Webマーケティング実行計画を3つのフェーズで示した図。フェーズ1は調査と戦略立案、フェーズ2はサイト改修とランディングページ整備、フェーズ3はLinkedIn広告やメール施策など各種施策の開始を表している

最小投資でモデルの確からしさを検証するための、実行計画案です。

フェーズ1(2~3か月)調査と戦略立案: 3C分析を行い、自社リソースの棚卸、自社のバリュープロポジションの制定、市場ニーズ、競合のベストプラクティス、典型的な顧客の悩みなどを調査し、セグメントごとの顧客像(ペルソナ)設定、カスタマージャーニーの制定をして、戦略立案を行います。

フェーズ2(2-3か月)信用の土台作りと「刈り取り」準備: 英語版サイトに規格認証、納入事例、品質保証、FAQ、納品体制といった「信頼要素」を徹底的に追加します。同時に、指名検索や比較検討といった購買意欲の高いキーワードに対応し、最適化した製品ページや、専門LPを準備します。問い合わせフォームの最適化も行います。

フェーズ3:常時集客と育成の開始: LinkedIn広告(役職・業種・地域でターゲティング)や検索連動型広告を少額でテスト運用します。 MA/CRMをすでに導入していれば、連携させてリードスコアリングを開始します。スコアの高いSQLのみを営業担当者に通知する仕組みを構築し、営業効率の改善を図ります。MAツールを導入していない場合は、まず、メールの自動配信などから始めてもよいでしょう。

改善と経営レポート 蓄積されたデータを分析し、ボトルネックとなっている箇所を特定し、優先的に改善するサイクルを構築します。その上で、実績に基づいた顧客獲得コスト、ROI、SQL数、受注見込額を分析し、「来期の展示会1回分の予算をデジタル投資に振り替える」といった具体的な計画案をつくり、デジタル施策の土台を作ります。

6. よくある反論と回答(経営会議でそのまま使えます)

Q1.「うちは製品が複雑で、WEBだけでは売れない」 A: その通りです。WEBの役割は“売り切る”ことではなく、“質の高い商談の問い合わせ(SQL)を安定供給する装置”と位置付けます。BtoB顧客の70%以上は、営業と会う前に自身で情報収集を完了させています。まずWebで顧客の興味を引き、専門的な説明は営業や技術担当に引き継ぐ、という分業体制こそが成功の鍵です。

Q2.「海外は結局、代理店がいないと回らない」 A: 直販への完全移行を目指すのではありません。ポイントは、一次問い合わせを本社で受け付ける体制を築くことです。これにより、市場のリアルタイムな需要データを自社に蓄積できます。その上で、大型案件は従来通り代理店と協業し、小口顧客は本社で対応するといった、柔軟なハイブリッド戦略が可能になります。

Q3.「展示会でしか会えない重要顧客もいる」 A: 重要顧客こそ、展示会に来場する前に必ずWebで出展社をリサーチしています。ある調査では、来場予定者の90%が事前に計画を立てており、64%が事前に検索を行うというデータもあります。 さらに、来場者の75%は、会場に到着する前に訪問したいブースを決めていると推定されているとも言われています。会場で会う前にWeb上で有益な情報を提供しておくことで、初対面の心理的ハードルが下がり、商談の成功率は飛躍的に高まります。大型出展を減らし、「小規模出展+常時デジタル接触」の組み合わせが最適です。

Q4.「WEBで見込み客を集めても、価格競争に巻き込まれるだけでは?」 A: 価格で比較されるからこそ、Web上で「価格以外の価値」を徹底的に可視化する必要があります。規格への適合性、製品の信頼性、充実したサポート体制などをコンテンツで訴求し、独自の付加価値を伝えます。問い合わせフォームで顧客の要求を詳細にヒアリングする仕組みを設けることで、価値を理解してくれる顧客を選別することも可能です。

7. まとめ

海外BtoB市場で勝ち抜くためには、もはや従来型の営業手法に固執することは許されません。顧客の購買行動がデジタルへと完全に移行し、営業担当者が接触する前に「買うもの」がほぼ決まっている今、企業の成長は「いかにしてオンライン上で見込み客と出会い、信頼を勝ち取るか」にかかっています。

本稿で一貫して提案したのは、展示会や出張といった単発・高コストな「フロー資産」への過度な依存から脱却し、良質なデジタルコンテンツを核とした「ストック資産」を築き上げる、持続可能な成長モデルへの転換です。

この「常時リード獲得装置」は、24時間365日、世界中から質の高い見込み客(SQL)を引き寄せ、営業チームの生産性を劇的に向上させます。同時に、既存の営業コストを最適化することで、新たな投資負担を増やすことなく、「売上増加」と「コスト削減」を両立させることが可能です。

この変革は、闇雲に多額の広告費を投下することではありません。まずは信頼性の高いウェブサイトという土台を固め、本稿で示した段階的な実行計画に沿って最小限の投資で効果を測定しながら、着実に仕組みを構築していくことが成功の鍵となります。

海外の競合他社がデジタルで先行する中、 遅れを取るわけにはいきません。今こそ、デジタル主導の成長戦略へ舵を切り、グローバル市場での確固たる地位を築くための第一歩を踏み出すべき時ではないでしょうか?

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