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【イスラム圏】越境ECで失敗しないための「ハラル市場」攻略ガイド:広告・クリエイティブの絶対NGと成功の鉄則

執筆者

北村 翔吾

プロフィール詳細

マレーシアに留学後に自動車輸出会社で海外営業担当をしたのち、世界へボカンにジョイン。
広告運用チームでFacebook広告、Google広告、インフルエンサー施策、アフィリエイト施策など幅広いプロジェクトに携わっている。

世界人口の約4分の1、およそ20億人を抱えるイスラム市場(ムスリム市場)。 マレーシアやインドネシアといったASEAN諸国から、UAEやサウジアラビアなどの中東諸国まで、その市場規模は急速に拡大しています。「日本製品(Japan Quality)」への信頼は非常に厚いエリアですが、日本企業が参入する際、最も高いハードルとなるのが「宗教的配慮(ハラル対応)」です。 特にWeb広告においては、画像一枚、キャッチコピー一行が命取りになることがあります。この記事では、イスラム圏へ越境EC広告を配信する際に、マーケターが絶対に知っておくべき注意点と攻略の鉄則を解説します。
目次
  • なぜ今、イスラム市場(ハラルマーケット)なのか?
  • 広告配信で絶対に避けるべき「3つのタブー」
  • 「ハラル認証」は必須?日本企業が誤解しているポイント
  • 最大の商戦期「ラマダン」を制するスケジュール
  • 日本企業の成功・失敗事例

こんな人におすすめ

  • マレーシア・インドネシア・中東への販路拡大を考えている方
  • 食品、化粧品、サプリメントを取り扱っている方
  • ハラル認証を取得していないが、イスラム圏へ販売したい方

広告配信で絶対に避けるべき「3つのタブー」

イスラム教徒(ムスリム)にとって、宗教は生活の一部です。彼らの規律(ハラム=禁止されていること)に触れるクリエイティブは、不快感を与えるだけでなく、即座に炎上・排除の対象となります。

視覚的なタブー(肌の露出・動物)

  • 女性の肌の露出: 水着や下着はもちろん、ノースリーブやミニスカート、胸元の開いた服を着たモデルの画像は避けましょう。特にサウジアラビアなど厳格な国ではNGです。美容広告でも、ヒジャブ(スカーフ)を着用したモデルを起用するか、肌の露出がない清潔感のある服装を選ぶのが鉄則です。
  • 犬・豚の画像: イスラム教において「豚」は不浄な動物として食べることを禁じられていますが、「犬」も不浄な存在(唾液などがNG)とされる宗派(特に東南アジアのシャフィー派)が多いです。ペットとのライフスタイル訴求で犬の画像を使うのは避けましょう。猫は預言者が愛した動物として好まれます。

宗教的シンボルの誤用

  • 十字架に見えるデザインや、他宗教を連想させるシンボルは避けましょう。
  • コーランの一節やアラビア語のカリグラフィーを、デザインの一部として軽々しく(特に足元や不浄な場所に関連する商品で)使用するのは厳禁です。

センシティブな表現

  • LGBTQ+を示唆する表現(レインボーカラーなど)は、イスラム圏の多くの国で法的・宗教的に認められておらず、広告アカウントの停止やサイトへのアクセス遮断につながるリスクがあります。

「ハラル認証」は必須?日本企業が誤解しているポイント

「ハラル認証がないと売れない」と思い込んでいませんか? もちろん認証があればベストですが、越境EC(個人輸入扱い)の段階では、必ずしも認証取得がスタートラインではありません。

重要なのは「情報開示」と「安心感」 認証がない場合でも、以下の情報をLP(ランディングページ)や広告内で明確にすることで、ムスリムユーザーは購入を検討してくれます。

  • Pork Free / Lard Free: 豚肉・豚由来成分(ゼラチン、油脂など)を一切使用していないこと。
  • Alcohol Free: アルコールを使用していないこと(化粧品や手指消毒剤も注意)。
  • 成分表の全公開: 英語(または現地語)で全成分を記載し、「隠し立てしていない」姿勢を見せること。

「ムスリムフレンドリー(Muslim Friendly)」というアプローチ 「ハラル認証済み」と名乗れない場合でも、「ムスリムフレンドリー」や「Wudhu Friendly(礼拝前の洗浄でも落ちる/水を通す化粧品)」といった訴求を行うことで、ターゲット層に受け入れられやすくなります。

最大の商戦期「ラマダン」を制するスケジュール

イスラム圏でモノが最も売れるのは、約1ヶ月続く断食月「ラマダン(Ramadan)」と、その明けの祭り「ハリラヤ(Hari Raya / Eid al-Fitr)」です。

  • ラマダン前〜前半: 準備期間です。食品、家を飾るインテリア、断食明けに着る新しい服、家族へのギフトなどの検索需要が急増します。
  • ラマダン中: 日中は断食していますが、夜間は盛大に食事をします。また、ECのトラフィックは「サフール(夜明け前の食事)」の時間帯(午前3時〜5時頃)にも伸びるという特殊な動きを見せます。
  • 広告配信のコツ: 通常月と同じ予算配分では埋もれます。ラマダンの1ヶ月前から認知を広げ、ラマダン前半で刈り取る「山型」の予算投下が成功の鍵です。

日本企業の成功・失敗事例

成功事例:成分の透明性で信頼獲得(化粧品) ハラル認証未取得の日本のスキンケアブランドの事例です。 LPのファーストビューに大きく「Alcohol Free & Animal Derived Ingredients Free(アルコール・動物由来成分不使用)」と掲示。さらに、植物由来であることを強調した「ボタニカル」なクリエイティブで安心感を醸成しました。 結果、「日本製×安心安全」のブランディングに成功し、認証なしでもインドネシア・マレーシアでヒット商品となりました。

【参照記事】Should Your Brand Go Sustainable: The Case of Skincare Brand in Indonesia

 

失敗事例:クリエイティブの「犬」で炎上(日用品) ある生活雑貨メーカーが、家族団らんの象徴として「ゴールデンレトリバーと遊ぶ子供」の動画広告を配信しました。 日本では微笑ましい光景ですが、東南アジアのイスラム教徒からは「不潔だ」「家の中に犬を入れるなんて」とネガティブな反応が殺到。ブランド全体への不信感につながり、撤退を余儀なくされました。現地の宗教観(犬=不浄)を知っていれば防げたミスです。

【参照記事】Organiser of KL pet-a-dog event attacked online

まとめ:リスペクトが最大の戦略

イスラム市場への展開は、単なる言語の翻訳では通用しません。 彼らの信仰を理解し、タブーを避け、生活様式(ラマダンなど)に寄り添うことが、信頼獲得への最短ルートです。

「難しそう」と敬遠する日本企業が多い今だからこそ、正しい知識を持って参入すれば、巨大なブルーオーシャンが広がっています。

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