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2026年版|越境ECにおいて重視すべき年間販促イベントの考え方

執筆者

ボカン編集部

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世界へボカンの"中の人"が、実際の事例を通して感じたことを中心に実務に即した話をお送りします。

はじめに

越境ECで販促施策を考える際、多くの場合まず議論に上がるのが、物流、決済、法規制、販路制限といった「制約条件」です。食品であれば国ごとの成分規制があり、小売やブランドであれば、商品製造元から国別の販売制限が設けられていることもあります。

しかし、それらと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、そもそも自社の商品はどの国・地域で、どのような文脈で求められているのかを見極めることです。

販促イベントは単なる売上獲得の場ではなく、「自分たちはどんなブランドとして見られたいのか」を表現する大きな機会でもあります。そのため、どのイベントに参加し、どう関わるかは、ブランドの方向性やターゲット顧客像と密接に結びついています。

越境ECにおいて成果を分ける最大のポイントは、単発の施策ではなく、年間を見据えた準備と逆算ができているかどうかです。本記事では、年間販促イベントを俯瞰しながら、「いつ・何を・なぜ行うべきか」を考えるための整理方法と実務視点を解説します。

1. 越境ECにおける「年間販促カレンダー」を持つ重要性

ブランド側の準備期間からキャンペーン開始までの流れと、それに対応する顧客の「認知・比較・購買」という3つの行動ステップを示した図解。

1-1. なぜ“年間視点”が必要なのか

多くの販促イベントは、当日になって突然始まるものではありません。
消費者の行動は、「認知 → 比較 → 購買」という段階を経て進み、これには数週間から数か月を要します。特にブラックフライデーのような大型商戦では、お客様は当日に初めて商品を探すのではなく、事前に複数ブランドを比較し、購入候補を決めた状態でセールを迎えます。つまり、成果は当日ではなく、事前の準備段階でほぼ決まっていると言っても過言ではありません。

年間視点を持たずに販促を設計すると、以下のような機会損失が発生しやすくなります。

  • 在庫計画の遅れや欠品
  • 配送条件や締切日の整理不足
  • LPやクリエイティブの準備不足
  • 広告配信開始の遅れによる学習不足

LP・クリエイティブは「事前に検証するもの」

越境ECでは、商品を実際に手に取ることができません。そのため、サイトバナー、キャンペーンLP、商品ページ、広告クリエイティブなど、視覚情報とコピーだけで、ブランドの世界観・商品価値・キャンペーン内容を伝える必要があります。

LPや画像・動画クリエイティブは、メインイベントの直前に一気に作り込むのではなく、可能な限り事前に広告配信などを通じてABテストを行い、反応の良い訴求や構成を見極めておくことが重要です。

年間視点で準備する最大のメリットは、こうした検証の時間を確保できる点にあります。

2. 年間販促イベントの整理方法

年間イベントを「全世界共通」「北米特有」「欧米中心」「アジア圏」の地域別に分類し、「準備時期・認知フェーズ・購買タイミング・施策の方向性」の4つの視点で検討することを促す概念図。

2-1. イベントは「地域カテゴリ」で整理する

越境ECでは、同じイベント名でも、市場ごとに購買の熱量や競争環境、物流事情が大きく異なります。そのため、イベントはまず地域で整理することが有効です。

  • 全世界共通(例:年末商戦)
  • 欧米中心
  • 北米特有
  • 日本以外のアジア圏

すべてのイベントに対応しようとするのではなく、自社にとって重要な市場とイベントを見極めることが前提になります。

2-2. 各イベントを「4つの視点」で判断する

個々のイベントは、以下の4つの視点で整理すると実務に落とし込みやすくなります。

  1. 準備開始の目安時期
  2. 認知を高めるフェーズ
  3. 購買が発生しやすいタイミング
  4. EC施策・キャンペーン実施の方向性

この整理によって、「なんとなく参加するイベント」ではなく、意図を持って選び、準備するイベントへと変わります。

2-3. 越境ECならではの注意点

欧州では国ごとの祝日や長期休暇に加え、フランスのように年2回、国全体で実施されるセール期間(Soldes)が存在します。また、日本以外のアジア圏では、旧正月を起点に物流が大幅に遅延、あるいは一時的に止まる可能性があります。

越境ECでは、お客様が「いつ商品を受け取りたいか」を前提に、販促イベント期間を設計する必要があります。

3. 主要イベント別|年間販促の考え方

越境ECの代表的な販促カレンダー。年始から春の「旧正月・イースター」、初夏の「母の日・サマーセール」、秋から年末の「ブラックフライデー・サイバーマンデー」、年末年始の「ボクシングデー」などを時期別にまとめた表。

3-1. 年初〜春

年初から春にかけては、短期的な売上最大化を狙うというよりも、年間を通した顧客との関係構築の起点を作る期間と位置づけるのが現実的です。

この時期に重要となる主なイベントは以下の通りです。

  • 旧正月(アジア圏中心)
    旧正月は、旧暦(太陰太陽暦)に基づく新年を祝う祝祭日で、中国、台湾、韓国、ベトナムなどを中心に、1週間前後の大型連休を伴います。購買需要が高まる一方で、物流停止や配送遅延が発生しやすく、アジア圏向け越境ECでは実務インパクトを十分に考慮する必要があります。
  • バレンタインデー
    バレンタインデーは、欧米を中心にギフト需要が高まるイベントで、パートナー向けだけでなく、自分へのご褒美購入(セルフパーチェス)も一定数見られます。価格訴求よりも、ギフトとしての分かりやすさやストーリー性が成果を左右します。
  • 国際女性デー(3月8日)
    国際女性デーは、特に欧州での認知度が高く、女性のエンパワーメントやサステナビリティと親和性の高いブランドにとってメッセージ性を打ち出しやすいイベントです。必ずしもセールを行う必要はなく、ブランド価値を伝える機会として活用されるケースもあります。
  • イースター(欧米中心)
    イースターはキリスト教の復活祭で、春の訪れを祝う家族行事として定着しています。日付は毎年変動しますが、欧米では連休に合わせた消費行動が見られ、食品・ギフト・ライフスタイル商材などと相性が良いイベントです。

これらのイベントは、すべての市場で同じように成果が出るわけではありません。
文化的背景や配送事情を踏まえ、「どの市場で意味を持つか」を冷静に判断することが、
年初〜春の販促設計では特に重要になります。

3-2. 初夏〜夏

初夏から夏にかけては、ギフト需要や季節商品の切り替えが発生する一方で、欧米では長期休暇(サマーホリデー)の影響により、EC需要が落ちやすい時期でもあります。

この時期の販促では、「どのイベントで売上を作るか」と「どの期間を次の繁忙期に向けた準備に充てるか」を意識的に分けて考えることが重要です。

主なイベントは以下の通りです。

  • 母の日・父の日
    母の日・父の日は、欧米を中心に定着しているギフトイベントで、購入目的が明確なため、越境ECでも比較的成果につながりやすい時期です。一方で、発送期限への意識が高くなるため、「いつまでに注文すれば間に合うか」を明確に伝えることが重要になります。割引率よりも、ギフトとしての分かりやすさや選びやすさが成果を左右します。
  • サマーセール(欧米中心)
    欧米におけるサマーセールは、日本の感覚よりも早く、6月頃がピークとなるケースが多いのが特徴です。7月以降は夏季休暇の影響で購買が鈍化しやすく、在庫調整や次シーズンへの切り替えを目的とした施策として位置づける方が現実的な場合もあります。
  • 北米の独立記念日(7月4日)
    米国の独立記念日は、北米市場において一定の認知度を持つ祝日で、夏のセール文脈と組み合わせて活用されることが多いイベントです。ただし、ブラックフライデーほどの購買インパクトはなく、ブランドや商材によって向き・不向きが分かれるため、無理に大規模な施策を行う必要はありません。

この時期は、すべてのイベントで売上最大化を狙うのではなく、売るイベントと、秋冬の大型商戦に向けて仕込むイベントを切り分けて設計することが、年間販促全体のバランスを取るうえで重要になります。

特に夏は、年末商戦に向けた基盤づくりの期間と捉えることが効果的です。具体的には、以下のような取り組みを意識的に行うことをおすすめします。

  • 商品レビューの蓄積
    年末商戦前に、可能な限り商品レビューを集めておくことで、購入を迷っているお客様の不安を解消し、BFCMやクリスマス期の「最後の後押し」につながります。
  • ソーシャルメディア上のコミュニティ強化
    フォロワー数を増やすことだけでなく、ブランドとの接触頻度やエンゲージメントを高めることで、秋冬のキャンペーン情報が届きやすい状態を作ることができます。
  • ニュースレター登録者の増加施策
    ニュースレターは、年末商戦時にブランド側からダイレクトに情報を届けられる数少ない手段です。夏の時期に登録者数を増やしておくことは、年末商戦における購買の「最後の一押し」として非常に重要な準備になります。

このように、夏は短期的な売上だけを見るのではなく、秋冬の成果を最大化するための土台を整える期間として、戦略的に活用することが求められます。

3-3. 秋〜年末の大型商戦

秋から年末にかけては、越境ECにおいて年間最大の売上機会となる期間です。特に欧米向け越境ECでは、この時期の成果が年間売上を大きく左右します。

ブラックフライデー/サイバーマンデー(BFCM|北米中心)

ブラックフライデーは、米国の感謝祭(11月第4木曜日)の翌日にあたる金曜日に行われる大型セールで、もともとは実店舗を中心に定着しました。現在ではオンライン・オフラインを問わず、年間で最も購買意欲が高まる日のひとつとなっています。

サイバーマンデーは、ブラックフライデー直後の月曜日に実施されるオンライン特化型のセールで、ECを中心に売上が集中するのが特徴です。
この2つを含む期間は一般的に BFCM(Black Friday & Cyber Monday) と呼ばれ、欧米市場では事実上、年末商戦の幕開けと位置づけられています。

ブラックフライデーやサイバーマンデーは、市場全体の購買意欲が非常に高い一方で、競合も一斉に動くため、非常に差が出やすいイベントでもあります。

実務における一般的な準備スケジュール

実務では、以下のような逆算スケジュールで準備を進めるケースが一般的です。

  • 9月頃:企画の方向性を固める
  • 10月:LPやバナーなどのクリエイティブを準備
  • 11月上旬:広告配信や事前告知を開始

また、会員限定のプレBFCM告知や先行案内を行うことで、この時期に会員数や顧客リストを伸ばし、セール開始時点で「待っている顧客」をどれだけ作れるかが、成果を大きく左右します。

 

売上と顧客リスト獲得の実例

欧米中心の越境ECでは、BFCMからクリスマスにかけて顧客の財布のひもが緩みやすく、売上を作るだけでなく、顧客リストを集中的に獲得できる最重要タイミングでもあります。

実務経験上、11月・12月に通常月の約3倍以上の売上を達成しているケースも存在します。ただし、これは初年度から偶然達成できるものではありません(立ち上げ初期や成長途中で売上規模が小さいフェーズでは、結果として倍率が大きく見えるケースもありますが、ここで言うのは一定の規模まで成長した後の話です)。

こうしたブランドに共通しているのは、「年末はこのブランドの買い時である」という認識を、時間をかけて顧客に伝え、教育してきた点です。

その結果、顧客は「毎年この時期に、何か良いものがお得になる」という期待感を持ち、年末商戦を目的にサイトを訪れる行動が定着しています。

 

「年末だけ買われるブランド」にならないために

ただし、ここで注意すべきなのは、「年末だけ買われるブランド」にならないことです。

理想的なのは、以下のような状態です。

  • 年末は特に魅力的な企画がある
  • それ以外の時期でも、欲しい商品が見つかれば購入される

一方で、短期的な売上実績を優先するあまり、商品・カテゴリー別の戦略を立てずに年末の大規模セールを繰り返した結果、「セール時にしか購入されないサイト」になってしまったケースも、残念ながら見てきました。この場合、顧客は価格にしか価値を感じなくなり、ブランドとしての持続的な成長が難しくなります。

 

年間視点での売上設計の重要性

そのため、「通常月の◯倍の売上を目指す」という目標設定は非常に重要ですが、それを単発で掲げるのではなく、年間の売上計画の中で設計することが欠かせません。まずは年間の売上目標を定め、月別に売上目標を分解する際に、「どの時期に最大の山を作るのか」を明確にします。

多くの場合、最大の山は年末商戦となり、次に夏のセール期が続くケースが一般的ですが、商材やカテゴリーによって最適解は異なります。

重要なのは、ブランド側が意図的に理想的な売上の波を作り出すことです。その上で、前年対比で1.5倍、2倍といったチャレンジングな目標を各月に設定し、イベント終了後はすぐに振り返りを行い、次年度の改善点を整理していく。

このサイクルを繰り返すことで、担当者の意識も自然と「年間販促を前提に考えるマインド」へと変わっていき、結果として、年々売上のベースが引き上げられていきます。

3-4. 年末〜年始

ボクシングデー

ボクシングデーは、12月26日に行われるセール日で、イギリス、カナダ、オーストラリアなどを中心に定着しています。クリスマス直後という位置づけから、年末商戦の延長として購買が発生しやすいのが特徴です。

年末年始セール


年末年始セールは、在庫調整やキャッシュフローの観点からも重要なタイミングであり、次年度につなげるための「区切り」としての役割を持ちます。

この時期は、在庫とキャッシュフローを整理し、次年度につなげるための重要な区切りです。ポイントは、年末年始セールを単独の施策として捉えるのではなく、ブラックフライデー前後から始まるキャンペーンの流れの中で設計することです。

ブラックフライデーで獲得した新規顧客や、セールをきっかけにブランドに関心を持った顧客に対して、年末年始セールを「次のアクション」として自然につなげることで、キャンペーン期間が長期化しても顧客の動きが鈍化しにくくなります。

ブラックフライデー → クリスマス → 年末年始セール

という一連の流れを意識して設計することが、継続的なキャンペーン期間において売上を最大化させるための重要な鍵となります。

参考:やらないと決めたイベントの例

実際に、過去には市場規模は大きいものの、ブランドとの相性が合わず、継続的な成果につながらなかったイベントから撤退したケースもあります。

例えば旧正月は、主な顧客が欧米に集中しており、文化的な関連性が低い場合、通常のキャンペーンとしては一定の売上は立つものの、反応が限定的でした。

そのため、サンクスギビングから始まったキャンペーンの流れを2月まで引き延ばす判断をやめ、クリエイティブ制作や運用コストを認知向上施策や春夏コレクション、サマーホリデーに向けた準備へ振り分けたケースもあります。

また、ブランドがサステナビリティを特徴としている場合、ブラックフライデーとの相性が必ずしも良いとは限りません。大量消費に疑問を持つ顧客が多い市場では、大きなセールに参加しない判断が、かえってブランド評価につながることもあります。

4. 年間販促を成功させるための共通ポイント

年間販促を成功させる2つのポイント。割引率ではなく単価(AOV)やLTVを重視する「割引ありきにしない設計」と、実行前・期間中・終了後の3フェーズでデータを分析する「過去データの活用」についてのまとめ。

4-1. 割引ありきにしない設計

販促イベントを設計する際、最初に「割引率」から考えてしまうケースは少なくありません。しかし実務上は、割引率を上げなくても成果が出るケースは多く存在します。

実際に、割引率を抑えつつ AOV(平均注文単価)を引き上げることで、売上全体が伸びた事例は珍しくありません。その鍵となるのが、「なぜまとめて買うのか」という理由を、
ブランド側が事前に用意できているかどうかです。

セット提案やコーディネート提案はその代表例であり、単なる価格メリットではなく、

  • 組み合わせの必然性
  • 利用シーンの具体性
  • ブランドの世界観

を通じて購買を後押しします。このような提案は、セール期間中に突然提示するよりも、ニュースレターやコンテンツ、インフルエンサー活用などを通じて事前にお客様をエデュケーションしておくことで効果が高まります。

また、セールは単発の売上を作る場ではなく、LTV(顧客生涯価値)を高める入口として捉えるべきです。ニュースレター登録や会員施策を組み合わせることで、セール後もブランドと接点を持ち続ける設計が可能になります。
重要なのは、「割引をしたかどうか」ではなく、セールを通じてどんな顧客関係を築けたかという視点です。

4-2. 過去データの活用

年間販促を設計・改善していくうえで、過去データの活用は欠かせません。感覚や経験だけに頼った判断は、短期的にはうまくいくことがあっても、再現性のある成果にはつながりにくいのが実情です。

実務では、販促施策を以下の3つのフェーズで捉えると整理しやすくなります。

実行前

  • 施策の目的・目標は何か
  • どの顧客行動を期待しているか

期間中

  • 想定どおりに反応が出ているか
  • 顧客が混乱していないか
  • 改善できるUXはないか

終了後

  • 実際にどこで購買が発生したか
  • 新規/既存顧客の反応に違いはあったか
  • 次回に活かせる示唆は何か

振り返りの際には、以下のような指標を組み合わせて確認します。

  • 購買が発生したタイミング
  • 新規顧客と既存顧客の反応差
  • 離脱ポイント(どこで購入をやめているか)
  • 主な流入元
  • 広告への反応

これらのデータをイベントごとに蓄積・比較していくことで、そのブランドにとって相性の良い販促手法が徐々に見えてきます。

5. まとめ|2026年に向けて

越境ECにおける年間販促イベントは、単発の施策を積み重ねるものではなく、顧客との関係を時間軸で設計していく取り組みです。

完璧な年間計画を最初から作ることよりも、早めに考え始め、検証し、改善を繰り返していくことが、結果として最も大きな成果につながります。

まずは以下の3点を整理することから始めてみてください。

  • 自社の主戦場となる市場はどこか
  • 特に重要だと考える販促イベントは何か
  • それぞれ、いつから準備を始めるべきか

この3点が見えるだけで、日々の施策判断や優先順位は大きく変わります。

年間販促イベントを「売上を作るための点」ではなく、ブランドと顧客の関係を育てる線として捉えること。それが、2026年以降の越境EC運営を安定させる基盤になります。

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