海外マーケティングブログ

海外SMSマーケティング活用法【完全ガイド】

海外SMSマーケティング完全ガイド。高開封率SMSの基本から成功事例・各国法規制・主要KPI・おすすめツールまで、日本企業が海外市場で成果を出す実践ポイントを徹底解説。

執筆者

長谷川淳一

プロフィール詳細

米国で電子工学の学位取得後、米銀で外国為替のアシスタントディーラー。帰国後、実家の不動産会社の経営、ソフト開発会社の起業等を経て、公的機関で中小企業の海外展開支援に10年間携わる。現在は、世界へボカン株式会社で調査・戦略立案を担当。BtoC、BtoB両方の調査実績。

スマートフォンの普及に伴い、顧客とのコミュニケーションチャネルは多様化していますが、近年、SMSを利用したマーケティングがその到達性の高さから注目を浴びています。この記事では、海外向けSMSマーケティングの基本から、具体的な活用法、成功事例、そして日本企業が海外市場で成功するためのポイントまでを徹底解説します。

1. 見直されるSMSマーケティングの重要性とグローバルな成長

モバイルファーストが当たり前となった現代において、SMS(ショートメッセージサービス)はその即時性、高い開封率、そして手軽さから、非常に効果的なマーケティングツールとして再評価されています。EメールやSNS通知が埋もれがちな中、SMSは受信トレイで際立ち、ほぼ確実に読まれるという大きな利点があります。

近年、SMSマーケティングが世界的に成長している背景には、パーソナライズされた情報提供への需要の高まりや、顧客エンゲージメントを深めたいという企業側のニーズがあります。特に、英語圏(米国、カナダ、イギリス、オーストラリアなど)では、SMSは一般的なコミュニケーション手段として定着しており、企業からの情報を受け取ることへの抵抗感が比較的少ない傾向にあります。これにより、SMSマーケティングは重要な顧客接点として積極的に活用されています。

2. SMSマーケティングの基本と主な用途

SMSマーケティングとは?

SMSマーケティングとは、顧客や見込み客に対して、携帯電話のSMS機能を利用してプロモーション情報、通知、リマインダーなどを送信するマーケティング手法です。最大の特徴は、98%以上とも言われる圧倒的な開封率と、送信後数分以内に開封される即時性です。

他のデジタルマーケティング手法と比較すると、Eメールマーケティングよりもダイレクトにメッセージを届けられ、SNSマーケティングのようにアルゴリズムに左右されることもありません。ただし、文字数制限があるため、簡潔で分かりやすいメッセージ作成が求められます。

主な活用用途

プロモーション通知・セール情報:

迅速な情報伝達が求められるキャンペーンに最適です。

  • 新商品リリースの告知。
  • 期間限定セールの告知。
  • フラッシュセールの告知。

リマインダー・通知:

リマインダーは通知等に使われると受信者にとっても有益です。例えば、このような例があります。

  • 予約確認(レストラン、美容院、クリニックなど)。
  • 支払い期日の通知、発送通知。
  • ウェビナーやイベント開催のリマインダー。

クーポン配信・ロイヤリティ施策:

受け取って、すぐに使いやすいということで、以下のような例があります。

  • 限定クーポンや割引コードをSMSで配信し、リピート購入を促進。
  • ロイヤリティプログラムの会員向けに特別な特典情報を提供。

アンケート・フィードバック収集:

商品購入後やサービス利用後、イベント参加後に簡単なアンケートを送信し、顧客満足度を測定することに手軽な伝達手段として使われます。

双方向コミュニケーション:

簡単な問い合わせに対するカスタマーサポートにも使われます。リアルタイムでの問題解決や情報提供に向いています。

3. 海外(英語圏)でのSMSマーケティング成功事例

実際に英語圏の企業で多くの企業がSMSマーケティングを活用し、成果を上げてます。具体的な事例を挙げてみます。

B2C企業の成功事例

スターバックス (Starbucks): 

モバイルアプリとSMS通知を利用して、新商品情報や限定オファー、リワードプログラムのポイント通知などをSMSで送信し、顧客のアプリ利用促進とロイヤリティ向上を促すような施策を行っています。

ドミノ・ピザ (Domino’s Pizza):

宅配ピザチェーンのドミノは、注文プロセスの簡素化にSMSを活用しており、 顧客に限定特典をSMSで届けるほか、絵文字をテキスト送信するだけで注文ができるキャンペーンも実施しました。

ヒルトン・ホテルズ (Hilton Hotels):

 宿泊客がSMSを通じてフロントデスクやコンシェルジュと直接コミュニケーションを取れるサービスを提供。チェックイン前の情報提供から滞在中のリクエスト対応まで、双方向のやり取りで顧客体験を向上させています。

B2B企業の事例

人材業界

求職者に対して、希望条件にマッチした新規求人情報をSMSで迅速に提供。また、面接日程のリマインダーを送信することで、面接のドタキャン率を低減させています。

営業チームの利用

展示会やウェビナー後のフォローアップとして、お礼のメッセージや関連資料のダウンロードリンクをSMSで送信。また、アポイントメントの日程調整やリマインダーにも活用し、営業プロセスの効率化を図っています。

4. 各国のSMSマーケティング規制と法的要件

海外でSMSマーケティングを実施する上で最も注意すべき点は、各国の法規制です。無許可のメッセージ送信は高額な罰金に繋がる可能性があるため、必ず遵守する必要があります。

米国:TCPA(Telephone Consumer Protection Act – 電話消費者保護法)

TCPAは、電話消費者保護法(TCPA)は、悪質で迷惑なテレマーケティング行為の増加を抑制するために1991年に制定されました。電話、SMS、ファックスによる宣伝・営業行為に関する法案で、あらかじめ作られ、用意されたテキストや音声などのメッセージを、リストにしたがって、一斉配信する際に適用されるものです。

明示的なオプトイン(同意取得)の義務

事前に書面(デジタル形式も含む)で消費者の明確な同意を得る必要があります。

配信停止(オプトアウト)機能の義務

 受信者がいつでも簡単に配信停止できる明確な手段を提供しなければなりません(例:「STOPと返信して配信停止」)。

規制違反の罰則

違反者には、違反1件につき最低500ドル、悪質な場合は最大で3倍(1,500ドル)までの損害賠償請求を個人が裁判で起こせます。また、クラスアクション(複数の原告を代表して1つの訴訟を起こし、同一の違反行為に基づく損害をまとめて回復でするような行為)が行えるため、デマンドレター(訴訟提起前の金銭請求書面)を大量に送付し早期和解を行うようなことが多発しました。現在、米下院司法小委員会では2017年に「TCPA 訴訟の乱用(abusive TCPA litigation)」をテーマに公聴会を開催し、法改正や行政規則の見直しが検討されています。

カナダ:CASL(Canada’s Anti-Spam Legislation – カナダのアンチスパム法)

これは、商業目的の電子メッセージ(メール、SMS等)に関わる法律ですが、カナダ国外から送信しても、受信者がカナダ在住ならCASLが適用されますので、注意が必要です。

商業メッセージ送信の際の事前同意の重要性

明示的または明確な同意が必要です、同意の記録を保持することが法的義務とされます。

メッセージ内に差出人情報を記載

送信者情報に記載される人と、実際に送信する人が違う場合は、その人物を識別する所定の情報を記載しなければなりません。また、いずれかの人物に連絡を取れるように情報を記載することが求められます。

無許可でのメッセージ送信の禁止

同意のない商業的電子メッセージ(CEM)の送信は厳しく制限されています。

EU・イギリス:GDPR(General Data Protection Regulation – 一般データ保護規則)PECR(Privacy and Electronic Communications Regulations – プライバシー・電子通信規則

GDPRは、多く知られたEUの個人データ保護法ですが、PECRは、英国の国内法で、通信事業者やマーケティング事業者による音声通話、SMS/MMS、メール配信、Web 上のクッキー・トラッキングなどが対象になる法律です。この二つの法律は、いずれも「個人のプライバシー保護」を目的とし、どちらも明示的同意(オプトイン)を重要視しているほか、罰則も定義されています。

個人情報の取り扱いに関する規制 

個人データの収集、処理、保存に関して厳格なルールが定められています。

明示的な同意と情報提供の義務

SMSマーケティングを行う際には、明確かつ自由な意思に基づく同意(オプトイン)が必要であり、送信目的や送信者情報を明示する必要があります。

オーストラリア:スパム法(Spam Act 2003)

SMSマーケティングにおける事前同意(オプトイン)の義務

SMS をマーケティング目的で送る前に、受信者から「事前の同意」を取得しておく必要があります。ただ、ソフトオプトイン例外というものがあり、既存の取引関係がある顧客(直近6か月以内に購入や契約がある場合)には、過去の取引内容に関連する商業メッセージなら同意不要とされることがあります。ただし、必ずオプトアウト手段を案内しなければなりません。

メッセージ内での送信者情報明示

送信元(企業名またはブランド名)を必ず SMS に明記し、受信者が誰から届いたのか一目で分かるようにします。

オプトアウト方法の提供義務

各メッセージに「”STOP”と返信で配信停止」など、明確かつ簡単に実行できる停止方法を必ず記載しなければなりません。オプトアウト依頼を受けたら、速やかに(通常 5 営業日以内)、以降の配信を停止する必要があります。

メッセージ内容の適正

誤解を招く件名や本文を禁止し、正確かつ公正に情報を伝えなければなりません。また、虚偽・誇大広告、スプーフィング(送信元偽装)は厳格に禁止されます。

規制違反の罰則

違反するとオーストラリア通信メディア機構(ACMA)が調査・勧告を行い、重大な場合は法人に対して1日あたり最大220万豪ドルの罰金が科される可能性があります。

まとめ

これらの規制は国によって細部が異なりますが、共通して「受信者の事前の同意(オプトイン)」容易な配信停止手段(オプトアウト)」の提供が求められています。

5. 日本企業が海外市場でSMSマーケティングを活用する方法

英語圏SMSマーケティングで押さえるポイント

日本の企業が海外、特に英語圏でSMSマーケティングを成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

法規制遵守を徹底し、リスクを最小化

上記で上げた様な対象国の法的規制を徹底的に調査し、遵守するための基盤づくりが重要です。例えば、明確なオプトインフォームの設置、同意記録の保管や、オプトアウト機能の提供を行います。必要であれば、法務部門や専門家との連携も検討することもお勧めします。

現地の消費者行動に合わせたメッセージの調整

各国の文化や消費者がSMSに対してどのような態度を持っているかを理解することが不可欠です。英語圏では一般的にSMS利用に肯定的ですが、過剰なメッセージ配信は嫌悪感につながりやすいため注意が必要です。メッセージのトーン&マナーも現地に合わせましょう。また、文化的なローカライゼーションを行わないメッセージを送ってしまうと不信感やブランドの棄損になることがあるため、注意が必要です。

パーソナライズとターゲティング

収集した顧客データを活用し、受信者一人ひとりに合わせたパーソナライズされたメッセージを送信します。名前の差し込みはもちろん、購買履歴、閲覧履歴、興味関心に基づいたセグメンテーションを行い、関連性の高い情報を提供しましょう。これには自動化ツールが必要ですが、次のセクションで上げるようなサービスを利用すると、安価に構築できます。

効果的なタイミングと頻度の調整

顧客のライフサイクル(例:新規登録時、誕生日、購買後のフォローアップなど)や行動(例:カート放棄時)に合わせて、最適なタイミングでメッセージを送信します。
SMSの配信頻度も重要です。有益な情報であっても、頻繁すぎると迷惑がられるため、適切なバランスを見極めましょう。A/Bテストなどで最適な頻度を検証するのも有効です。

海外市場向けにおすすめのSMSマーケティングツール

効果的なSMSマーケティングを実施するためには、適切なツールの選定が不可欠です。ここでは、グローバル展開に対応した代表的なツールをいくつか紹介します。

Twilio: (米国:従量課金制 $0.0079 /発信or着信毎)

APIを介してSMS送信機能を自社システムに柔軟に組み込めるプラットフォーム。グローバルなカバレッジと高いスケーラビリティが強みで、開発者フレンドリーな環境を提供します。大規模なグローバルキャンペーンや、システム統合が求められる企業向け。APIを使ってカスタマイズや拡張性が求められる場合に最適。

EZ Texting:($20/月~)

小規模な中小企業や、簡便にSMSマーケティングを始めたい場合に最適。インターフェースが使いやすく、キャンペーン管理に特化。 リスト管理、自動応答などの機能が充実しています。

SimpleTexting: ($39/月~)

直感的なインターフェースで、簡単にSMSマーケティングキャンペーンの作成・実行が可能です。キーワード設定によるリスト収集、セグメンテーション、アナリティクスなど、細かなターゲティング機能も提供しています。

Klaviyo: (Email+SMS $60/月~)

主にEコマースサイト向けに強みを持つマーケティングオートメーションプラットフォーム。EメールマーケティングとSMSマーケティングをシームレスに統合できるため、両方を行いたい企業には良い選択でしょう。顧客行動に基づいた高度な自動化フローを構築できます。無料のお試しプランが用意されています。

 

7. SMSマーケティングの効果測定とKPI(重要業績評価指標)

SMSマーケティングの効果を最大化するためには、主要なKPIを追跡し、改善を続けることが重要です。以下は、代表的なKPIと、その平均値(基準値)などを集めました。 ただ、平均値(基準値)は、統計の取り方、母集団の性質で変わりますので、参考としてお考え下さい。

SMSマーケティングの代表的なKPI

開封率(Open Rate)

送信したSMSが受信者に開封された割合です。様々な統計データを参照しても、一般的にSMSは98%以上と非常に高い開封率を誇ります。実際に開封されているかを確認する基本的な指標ですが、技術的に正確な開封率トラッキングが難しい場合もあります。

クリック率(CTR – Click Through Rate)

SMS内のリンクがクリックされた割合。メッセージの魅力度やCTA(Call to Action)の有効性を測る重要な指標です。短縮URLサービスを利用してトラッキングすることが一般的です。

コンバージョン率(Conversion Rate)

SMS経由で、目的とするアクション(商品購入、会員登録、問い合わせなど)が完了した割合。SMSマーケティングの最終的な成果を示します。パーソナライズされたメッセージや明確なCTAがコンバージョン率向上に貢献します。

ROI(Return on Investment – 投資対効果)

SMSマーケティングに投じた費用に対して、どれだけの利益が得られたかを示す指標。(利益 – 投資額) / 投資額 × 100 で計算されます。コスト効率と収益効果を評価し、キャンペーンの継続可否や予算配分の判断材料となります。

配信停止率(Opt-out Rate)

SMS配信リストから配信停止を選択した受信者の割合。この率が高い場合、メッセージ内容、頻度、ターゲティングのいずれかに問題がある可能性があります。これらのKPIを定期的に分析し、メッセージ内容、配信タイミング、ターゲットセグメントなどを最適化していくことが成功の鍵となります。

SMSマーケティングの参考基準値

以下に、SMSマーケティングで重視される主要KPIの平均値と一般的な下限〜上限の目安を示します(業種横断的な平均)。各値は信頼性の高い海外ソースに基づきますが、あくまでも参考ですので、ご理解の上でお読みください。

KPI項目                  平均値(目安)          一般的な範囲(下限〜上限)       

開封率(Open Rate)

約98%※1

80%台後半〜90%台後半※2

クリック率(CTR – Click Through Rate)

約10〜20%※3

約6%〜35%※4

コンバージョン率(Conversion Rate)

約25%※1

約20%〜30%※1

ROI(Return on Investment – 投資対効果)

1ドル当たり約21〜40ドル※1

1ドル当たり約10ドル〜70ドル※1、5

配信停止率(Opt-out Rate)

~2%未満※6

約1%〜2%(高くても5%未満)※6、4

出典:

    1. The Ultimate Guide to SMS Marketing Statistics
    2. How to Champion SMS Marketing to Internal Stakeholders
    3. 20+ SMS Marketing Statistics (With Sources) to Know in 2025
    4. SMS Conversion Rates & More: Five Marketing Metrics + KPIs for Business Growth
    5. 30 SMS Marketing Statistics You Need to Know For 2024
    6. Texting & SMS marketing statistics in 2024

 

英語圏SMSマーケティングのまとめ

SMSマーケティングは、その即時性と高い開封率を活かすことで、海外市場においても非常に強力なマーケティング手法です。日本企業が海外市場でSMSマーケティングを成功させるためには、ターゲット市場の法規制を徹底して遵守し、現地の文化や消費者の行動様式を深く理解した上で、パーソナライズされた魅力的なキャンペーンを実施することが不可欠です。

SMSは進化を続けており、Googleが普及を進めているサービスとして、RCS(Rich Communication Service)があります。SMSの機能を拡張し、高解像度の写真や動画の共有、グループチャット、既読通知、タイピングインジケーター、リッチカード(カルーセル表示やボタン付きメッセージなど)といった、よりリッチなコミュニケーション機能を提供するものです。iPhoneではプリインストールされていないため、普及はまだこれからというところですが、SMSの進化は確実に来るでしょう。

また、もう一つ、今後は、AI(人工知能)を活用したパーソナライズと自動化がSMSマーケティングの鍵を握っていると思えることです。AIが顧客データを分析し、最適なメッセージ内容、配信タイミング、頻度を自動で判断・実行することで、より精度の高い、一人ひとりに最適化されたコミュニケーションが実現することになるでしょう。

 

 

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