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海外BtoBウェブサイトの正解:共通アーキテクチャ×産業別テンプレでリードを生む

ブログ記事「失敗しない海外向けBtoB ウェブサイト構築戦略ガイド:貴社の訴求、不足してませんか?」のカバー画像

1.結論:海外BtoBサイトは「価値証明のプロセス」で設計せよ

海外市場でリード獲得を目指すには、単なる「翻訳版サイト」ではなく、戦略的な「価値証明サイト」への変革が急務です。その鍵は、①価値提案(VP)→ ②客観的証拠 → ③行動喚起(CTA)というプロセスをサイト上で明確に提示することにあります。知名度の低い市場でも顧客の信頼を勝ち取り、具体的な商談へとつなげるためには、そのようなアプローチが必要です。

典型的なBtoBサイトは、共通する構造があります。本記事では、主要産業ごとの海外の英語Webサイト構成パターンを分析し、日本企業サイトによく見られる課題と改善策を示すことで、経営者や決裁者が押さえておくべき戦略的ポイントを整理します。

 

2.共通アーキテクチャ(情報設計の基本形)

英語Webサイトのデザインをイメージした画像

弊社で、海外の多くのBtoBサイトをリサーチで分析してきて、成功している海外のBtoBサイトは、業界を問わず、顧客が求める情報を直感的に見つけられる共通の「型」を持っていることを確認しています。

グローバルBtoBサイトの型

グローバルメニューに置くべき情報(必要なページ)

海外のBtoBサイトのグローバルメニューを見ていると、大体、下記のようなメニューに集約されています。ユーザーの課題を解決するための、ユーザー目線の項目になっている点に注目してください。

  • Products / Services: 何を提供しているか(製品・サービス情報)
  • Industries / Applications: 誰の・どんな課題を解決するか(業種・用途別ソリューション)
  • Resources: なぜ専門性があるのか、どのような技術があるのか(技術資料・ブログ・ホワイトペーパー)
  • Company / About : どんな企業なのか(会社概要・サステナビリティ)
  • Contact / CTA: 次に何をすべきか(問い合わせ・見積依頼・デモ申込)

上記は、多くのサイトのグローバルメニューに現れる典型的なメニューアイテムです。その他に重要な内容として、下記があります。

  • Case Studies / Customers: なぜ信頼できるのか(導入事例・顧客の声)
  • Support: どうサポートしてくれるのか(顧客支援・FAQ・代理店情報)

上記は、場合によってグローバルメニューに直接配置して目立たせたり、ResourcesCompany / Aboutのサブメニューの中に配置されます。

最近のミニマリストデザインでは、グローバルメニューに出す項目をProducts / Services、Industries / Applications、Resources、Contact / CTA絞り、そのほかの情報すべてをフッターメニューに入れることも多くなっています。そのため、海外ユーザーは、フッターメニューですべての項目を探す傾向があるため、フッターメニューは、すべてのページへナビゲーション出来るように、情報を整理しておいておく必要があります。また、日本企業は公式SNSを配置しない場合も多いのですが、海外サイトでは公式SNSをフッターに配置することが普通です。

フッターメニューに置くべき情報

  • すべてのメインカテゴリーページ、ポリシーページへのリンク
  • 公式SNS
  • メールマガジンの登録ボックス
  • 会社情報(ロゴや連絡先など)

ファーストビューの要件

訪問者が3秒で「自分ごと化」できるかが勝負だと言われています。以下の要素を必ず配置します。

  • 価値主張(Value Proposition): 我々が「誰に、何を提供し、どう変えるか」を1行で示すキャッチコピー。
  • 主要CTA(Call to Action): 訪問者に取ってほしい最も重要なアクションへのボタン(例:「デモを予約する」「無料トライアル」)。

また、下記のような要素を入れると、より具体的な訴求となります。

  • 根拠(Proof): 導入社数、市場シェア、取得認証ロゴ、顧客ロゴなど、主張を裏付ける客観的事実。

日本企業の場合、ファーストビューの訴求が弱く、一目ではなんの会社かよくわからないという事が多々見受けられます。これについては、後ほど、詳しくご説明します。下図は米国のサイバーセキュリティー企業、Arctic Wolf社のファーストビューですが、短いキャッチコピーとCTAを載せています。また、彼らは潜在顧客の信頼獲得コンテンツとして、様々なレポートを提供しており、それらのリンクもここに載せて誘導しています。また、顧客のロゴもファーストビュー直下に、左から右に流れるティッカーとして表示しています。

米国のサイバーセキュリティー企業、Arctic Wolfのファーストビュー画像

トップページワイヤーフレーム仕様(情報優先度)

PC・モバイル共通で、上から下にスクロールする際の典型的な情報配置の例は以下の通りです。現在、BtoB企業でもモバイルフレンドリーなデザインが多く利用されています。画像は大きく、見出しを使って端的に説明することが重要です。古いウェブサイトの型では個別ページへのバナーを単に置くページとなっていますが、現在のデザインでは端的な説明と訴求も行い、個別ページへの誘導をするページとなっています。

  1. ヘッダー: ロゴ、グローバルナビゲーション、CTAボタン
  2. ファーストビュー: 上記の「価値主張+根拠+主要CTA」
  3. 社会的証明: 顧客企業のロゴ一覧、推薦コメント
  4. 課題提起とソリューション: 顧客の課題を提示し、自社がどう解決するかを簡潔に紹介
  5. 製品・サービス概要: 主力製品やサービスへの導線
  6. 導入事例ハイライト: 最も強力なケーススタディを1〜2件紹介
  7. 会社情報: 簡単な自社紹介とAbout Usページへの誘導
  8. 信頼性コンテンツ: ホワイトペーパーやブログなど専門知識を示すリソースへの導線
  9. 最終CTA: ページ末尾で再度アクションを促す
  10. フッター: サイトマップ、会社情報、サポート、プライバシーポリシー

トップページの情報の置き方などをイメージしたものがこちらですが、内容によって、取捨選択したり、デザインは大幅に変わります。ただ、ユーザーにとっての課題解決に関連がありそうなものを上に置くようにします。

BtoB企業のトップページの情報の置き方の例。

 

3.産業別BtoB ウェブサイトの「型テンプレ」

産業別に、基本の情報構成に必要なものが変わってきます。そのことを暗示するイメージ画像

各業界で重視される情報と、効果的なアプローチは異なります。前セクションで挙げた基本の構成に、以下の産業別の要素が加わります。とくに、部品などの膨大な商品数を持っている場合は、商品検索機能が非常に重要になります。

製造業 / 産業機械

様々な工業製品を扱うメーカー全般。技術力や品質で差別化し、詳細な製品情報が求められます。製品スペックや、様々なデータシート、導入事例などをリソースページで提供します。これらはPDF化したホワイトペーパーの形や、ブログ、個別記事の形で提供されます。部品アイテム数が多い場合は、商品検索機能が必要となります。また、自動車関連、航空宇宙関連では、様々な認証等の情報が重要になります。大型の産業機械や装置等は、アフターサービス体制なども重要です。

  • ①必須要素: 製品スペックデータベース、カテゴリ別製品一覧、産業別ソリューション
  • ②推奨証拠: 詳細な導入事例(数値改善効果)、技術資料、各国の安全規格・認証ロゴ
  • ③CTA: 見積依頼 (Get a Quote)、カタログダウンロード、代理店検索

電子部品 / 半導体

豊富な製品ラインナップと用途別(アプリケーション別)の情報提供が鍵となります。商品検索機能が重要で、トップページの目立つところに商品検索ボックスを配置します。また、DigikeyやRSコンポーネンツ等での在庫案内やリンク等を用意している企業も多く、この分野ではかなり必要性が高い機能となっています。

  • ①必須要素: 複数のパラメータが使える検索機能、アプリケーションノート、設計支援ツール
  • ②推奨証拠: データシート、開発事例、リファレンスデザイン、品質・信頼性レポート
  • ③CTA: サンプル請求 (Request a Sample)、技術資料ダウンロード、エンジニアへの問い合わせ

医療機器

規制対応や臨床実績など信頼性の訴求が重要です。学術レベルの資料が求められることも多く、ホワイトペーパーや、記事の充実なども重要です。

  • ①必須要素: 製品情報(適応疾患・手技)、臨床ソリューション(診療科別)、学術情報・セミナー
  • ②推奨証拠: 臨床データ・論文、医療機関での導入事例、規制当局の承認・認証(例: FDA, CE, UDI対応)
  • ③CTA: デモ依頼 (Request a Demo)、製品トレーニング申込、専門家への相談

建設 / インフラ

施工実績(プロジェクト事例)やサービス内容を明確に示す必要があります。プロジェクト実績等は重要なため、グローバルメニューに載せる企業も多いです。

  • ①必須要素: プロジェクト実績(竣工写真・動画、規模、場所)、サービスラインナップ(設計・施工・保守)
  • ②推奨証拠: 施工事例詳細レポート、安全規格への準拠証明、顧客からの推薦状
  • ③CTA: 施工事例ダウンロード、見積依頼、販売・レンタル店検索

素材 / 化学

製品スペックやデータシートだけでなく、環境対応や用途展開を伝えることが求められます。サステナビリティーに関しては、多くの企業が専門ページを設置し、認証等も含めて詳しい説明をしています。

  • ①必須要素: 製品(素材)一覧、物性データ、用途・アプリケーション事例
  • ②推奨証拠: 品質保証データ、SDS(安全データシート)、環境・サステナビリティ報告書、各種認証(ISO等)
  • ③CTA: サンプル依頼、SDSダウンロード、技術問い合わせ

SaaS(クラウドサービス)

クラウド型ソフト提供企業。製品機能の説明に加え、料金プランや導入事例、サポート情報が重視されます。

  • ①必須要素: 機能紹介、価格プラン、リソース(ブログ、ホワイトペーパー)
  • ②推奨証拠: 導入事例(顧客ロゴと具体的なROI)、利用者の声、セキュリティ認証(SOC2, ISO 27001等)
  • ③CTA: 無料トライアル開始 (Start Free Trial)、デモ予約、資料ダウンロード

物流 / サービス

サービス網や配送ソリューション、顧客事例、追跡システムなど信頼性と利便性を示すコンテンツが必要です。

  • ①必須要素: サービス一覧(輸送、倉庫、通関等)、業界別ソリューション、追跡ツール
  • ②推奨証拠: グローバル拠点ネットワーク図、顧客導入事例、SLA(サービス品質保証)の明記
  • ③CTA: 見積依頼 (Get a Quote)、お問い合わせ、拠点検索

全般的に、BtoBサイトの場合、事例ページは全般に渡って鉄板コンテンツであり、トップ企業ほどそれらを効果的に配置しています。

 

4. 日本企業の典型課題→改善チェックリスト

日本のBtoB企業(特に製造業)の英語サイト海外サイトに見られがちな6つの弱点をと、改善する際の具体的なアクションをまとめました。

課題① 抽象的なメッセージ・会社紹介偏重

日本企業のサイトはトップページに自社の経営理念を掲げがちですが、海外ではこうした抽象的アピールはほとんど見られません。社内で「Into the Future問題」と呼んでいるのですが、宇宙や大きな木の画像にふわっとしたスローガンのファーストビューを使用している企業が多かったのですが、これでは価値が伝わらず、ユーザーは離脱してしまいます。近年、多く見られるパターンとしては、工場のドローン動画をファーストビューにしているものがあるのですが、何を製造しているのかがよくわからない事が多く、キャッチコピー等を工夫する必要があります。

改善策

  • トップページのファーストビューに「誰の、どんな課題を、どう解決するのか」を30ワード以内で記述する。
  • 競合他社サイト3社の価値提案(VP)と比較し、自社の独自性が伝わるか検証する。

課題② 翻訳止まりでローカライズ不足

単に日本語ページを英訳しただけでは、現地顧客には情報不足となりがちです。日本では有名な会社でも海外では認知がないことが多く、会社や製品のことを知らない訪問者向けの訴求が必要だからです。ターゲット国の文化・業界事情を踏まえた上でユーザー像に合わせたコンテンツに修正する必要があります。

改善策

  • 調査で得たユーザー像に向けたコンテンツに修正する
  • ターゲット市場の主要な品質基準や業界規格への適合性をまとめたページを作成する。
  • 現地のネイティブ専門家(または代理店)による、専門用語やキャッチコピーのレビュープロセスを導入・義務化する。

課題③ 導入事例・顧客の声など社会的証明の欠如

日本企業サイトでは事例コンテンツが不足しがちで、あっても日本語ページのみで英語版に未掲載というケースがあります。海外競合サイトでは顧客企業のロゴや利用者の testimonial(推薦コメント)をトップページから掲載し、信頼性を訴求するのが一般的です。部品などの場合、顧客が情報を開示することを好まない場合が多く、難しい事もあると思いますが、匿名で説明ができるような資料なども検討します。

改善策

  • 事例の最小フォーマット(顧客の課題/導入した解決策/導入後の定量的成果/顧客ロゴ)を定義する。
  • 四半期ごとに英語の導入事例を決め(例:最低2本追加等)、公開することを目標に設定し、実行する。

課題④ パートナー・現地サポート情報の不足

海外ユーザーにとって「購入後にちゃんとサポートが受けられるか」「現地に窓口があるか」は重要な判断基準ですが、日本企業サイトでは販売代理店リストやパートナープログラム情報が十分掲載されていない場合があります。

改善策

  • 海外の全拠点・代理店の「住所」「電話番号」「メールアドレス」「対応言語」「営業時間」を一覧化した”Global Network”ページを作成する。
  • 各製品ページに、その製品を取り扱う最寄りの代理店を検索できる機能を設置する。

課題⑤ CTA(問い合わせ導線)の弱さ

多くの日本企業サイトではお問い合わせフォームへのリンクが目立たず、ユーザーが次に何をすべきか迷うケースがあります。海外のBtoBサイトではトップページから「見積依頼」「デモ申込」「カタログ請求」など複数のCTAボタンを配置し、訪問者が行動を起こしやすい工夫が当たり前です。

改善策

  •  全ての製品・ソリューションページに、「問い合わせ」や「見積依頼」「デモ依頼」「資料請求」のいずれかのCTAボタンをファーストビュー内に必ず配置する。
  • 問い合わせフォームの入力項目を最低限の項目(5項目程度)に削減し、離脱率を改善する。

課題⑥ UI/UXの時代遅れ・非最適化

日本企業の海外向けサイトには、文字情報が過多でビジュアルに欠ける「カタログ然」としたデザインや、モバイル対応の不備、ページ表示の遅さといった問題も散見されます。2000年代の古いデザインのまま変わっていないサイトも多いのですが、特に海外ユーザーはスマートフォンで閲覧する比率も高く、表示速度が遅いと即座に離脱につながる上、ブランディング的にも「古い」「遅れた」というイメージを訪問者に与えることになるため、そのようなサイトの場合はアップデートをお勧めします。

改善策

  • GoogleのPageSpeed Insightsを利用し、サイトの主要ページのモバイル表示速度スコアを70点以上に改善する。
  • スマートフォンとタブレットの実機を使用し、全ページで表示崩れや操作不能な箇所がないか定期的にテスト・検収する。

 

5. おわりに: グローバルサイト構築の成功に向けて

海外向けBtoB Webサイトは単なる情報掲載の場ではなく、グローバル市場で戦略的にリードを獲得するための重要な武器です。日本企業には地理的ハンデや価格競争上の不利があるものの、ニッチ分野で独自の強みを打ち出すことで活路は開けます。

本稿で示した業界別の構成パターンや改善ポイント、そして情報設計の指針を踏まえ、自社ならではの価値を的確に伝えるサイトを構築してください。経営層のリーダーシップの下、ユーザー視点と戦略性を両立させたWebサイトは、必ずや海外市場での信頼獲得と事業成長に寄与することでしょう。

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