海外マーケティングブログ

海外営業の属人化をどう解消するか〜製造業BtoBデジタルマーケティングの現実解〜

執筆者

徳田 祐希 / Tokuda Yuki

プロフィール詳細

世界へボカン株式会社 代表取締役
イギリス留学を経て、海外WEBマーケティングを行う企業に入社。外国人マーケターと共に海外WEBマーケティングチームを牽引する。特に英語サイトのSEOに精通し、東京だけでなく、新潟、京都、大阪、名古屋、福岡等、日本全国を飛び回り、クライアントと膝を突き合わせ、WEBコンサルティングを行うスタイルを得意とする。海外WEBコンサルティングで、アフリカ向け中古車輸出企業の売上を30億円から1000億円に導く等、中古車輸出、製造業、不動産関連のプロジェクトで数多くの実績を残す。2014年8月に世界へボカン株式会社を設立。

はじめに

「もしうちのエース営業マンが辞めてしまったら、海外事業が崩壊するかもしれない」

こうした相談が後を絶ちません。内需縮小を背景に海外市場へ販路を広げる製造業は年々増えていますが、その一方で、海外営業の成果が特定の担当者に集中してしまう「属人化」が深刻な課題となっています。

私がこれまで相談を受けてきた海外販路開拓案件では、年商5億円から600億円の規模を問わず、ほぼすべての企業が何らかの形で属人化を抱えていました。本記事では、属人化のリスクの本質と、デジタルマーケティングを活用した現実的な解消策をご紹介します。

なぜ製造業の海外営業は属人化しやすいのか

海外営業は一言で言えば「選ばれた人間だけができる仕事」という側面を持っています。英語力はもちろん、自社製品の細部まで技術的に説明できる知識、そして初対面の外国人に積極的に話しかけるコミュニケーション力が同時に求められます。

海外営業のエースの属人化は企業にとってリスクです

また、展示会での名刺交換、既存顧客からの紹介、個人的なネットワークを起点とした引き合いなど、リード獲得そのものが「人」に依存しているケースも多く見られます。成果が出ているうちは仕組み化が後回しになり、気づかないうちに属人化が進んでしまうのです。


属人化の本当のリスクは「退職」だけではない

エース営業マンが辞めたら売上が止まる、というリスクは誰もが想像します。しかし、実際には見落とされがちな問題が3つあります。

海外営業属人化のリスク

リスク1:エース海外営業がボトルネックになる

月に50件の有効な問い合わせがあっても、エース営業のキャパシティは20件分ほど。大谷翔平選手でも毎日登板できないように、どれだけ優秀な担当者でも処理能力には上限があります。その結果、毎月30件分のビジネスチャンスを逃し続けることになります。
さらに深刻なのは、エースの成長スピードがそのまま会社の成長スピードの限界になってしまうことです。会社が伸びたいと思っても、「その人の処理速度」を超えられない構造になってしまいます。

エースの営業マンがネックになる。

リスク2:ノウハウが組織に蓄積されない

アメリカの食品業界ではこう対応する、ドイツのバイヤーにはこうクロージングする……
こうした地域・業界ごとの肌感が、担当者の頭の中だけに存在している。その人が退職すると、また積み木をゼロから積み直す羽目になります。

ノウハウが共有されない

リスク3:次世代メンバーが育たない

海外営業が「特別な人の仕事」になってしまい、若手が経験を積む機会が生まれません。5年後・10年後のエースが育たないまま、ベテランが引退すれば、伝統芸能のように技術が消えてしまいます。

海外営業が聖域化して若手が育つ土壌が失われる

見落としがちなリスク:顧客データが個人に紐付いている

海外では名刺交換の代わりにLinkedInでつながるケースが増えています。エース営業マンの個人アカウントで顧客と繋がっている場合、その人が退職すると顧客リストが一瞬で消滅します。会社としての関係性がゼロになってしまうのです。

【実態】立場が逆転してしまっている会社

「社長がおそるおそるエース営業マンと会話している」という光景は珍しくありません。10億円単位の損失リスクを抱えているため、社長ですら担当者に強く言えなくなってしまう。属人化が進むほど、その担当者の交渉力と社内のポジションが高まり、組織のリスクが膨らんでいきます。

エース営業マン自身もノウハウを渡したいと思っている

実際にエース営業マンにヒアリングをすると、多くの場合「自分のやり方を若手に引き継ぎたい」という気持ちを持っています。しかし、現場の空気感や言葉の選び方、思考プロセスなどは一人では言語化が難しく、ノウハウの継承が頓挫してしまっているのです。
また、自分がなぜ売れているのかを「センス」と捉えており、言語化できていないケースも多くあります。第三者が客観的に見てはじめて「あなたのこの部分が強みだ」「若手との差分はここにある」と整理できるのです。
エースと若手の差は、「悟空と餃子ほど」圧倒的かもしれません。しかし、適切な環境とトレーニングがあれば、若手は悟飯レベルまで成長できます。もしかしたらエースを超える人材が生まれるかもしれません。

デジタルマーケティングが属人化解消につながる理由

こうした課題に対して有効なのが、デジタルを活用したマーケティングへの取り組みです。ここで重要なのは、単に英語サイトを作ることではありません。

エース海外営業が日々行っている判断や説明、つまり「頭の中にあるノウハウ」を整理し、デジタル上に落とし込むことがポイントです。私たちは、エースの営業マンのトークスクリプトやノウハウを海外向けのWebサイトに落とし込むことでサイト上で提供する情報とその後のセールストークの乖離を減らすことができると考えています。

また、サイト上にエースの営業マンのノウハウを載せることで若手の営業マンも同様のセールストークができるようになります。

企業として情報開示が困難なことも

これはまた別の問題ですが、多くの企業がこの取り組みをする際に競合他社に情報を渡したくない、クライアントが事例協力してくれないという課題に直面します。私たちはこの問題に対しても何度も取り組み情報をレベル分けして出すことで競合他社にコアとなる情報を渡さず、欲しい顧客のリードを獲得するメソッドを持っています。

属人化解消の現実解:3つのステップ

製造業の強みは「技術力」と「製品力」です。これをデジタル上で正しく伝えることが鍵となります。

海外営業の属人化を減らす3つの現実解

ステップ1:Webサイトを「24時間働くエース営業の分身」に変える

ただ英語に翻訳しただけのカタログサイトでは意味がありません。日本のWebサイトにありがちな抽象的なビジュアルと「明日へ」「未来へ」というコピーでは、海外のバイヤーはそっとパソコンを閉じてしまいます。海外の技術者や購買担当者が知りたい情報を網羅した「使えるサイト」にする必要があります。

Webサイトを24時間働く営業マンにする

海外向けサイトに必要な要素:

  • 「なぜ自社を選ぶべきか」をファーストビューで明確に提示する
  • スペック・技術情報をWeb上で検索・比較できる形にする
  • 「○○の課題を解決したい」という顧客視点の課題解決コンテンツを用意する
  • 問い合わせ・資料DL・サンプル請求など複数のCTAを設置する

属人化解消ポイント: これまで営業担当者が口頭や個別メールで説明していた技術的な質問への回答を、Webサイトが自動で行ってくれるようになります。

ステップ2:営業の知見を「コンテンツ資産」に変える

エース営業マンとヒアリングセッションを行い、商談の録画・棚卸しを通じて「どんな説明で顧客が価値を感じるか」を抽出します。この暗黙知を形式知に変換し、以下のコンテンツに落とし込みます。

ベテラン営業の暗黙知を誰でも使える形式知へ

【現実解のアクション】

ホワイトペーパー/技術資料

「業界動向と自社技術の優位性」「導入事例に見るコスト削減効果」など、ノウハウをまとめた資料を作成し、リード情報(見込み客情報)と引き換えに提供する。

動画コンテンツ

 製品の動作デモ、メンテナンス方法、技術解説セミナーなどを動画化する。製造業において百聞は一見に如かずです。
→私たちの場合は、良くご説明させて頂く情報についてはYouTubeに蓄積し、その動画をお渡しするようにしています。

FAQの充実

海外顧客からよくある質問を体系化し、Webに掲載する。
→FAQコンテンツの充実は忙しい海外が営業の負担を大幅に軽減します。

属人化解消ポイント: 一度作れば半永久的に働き続ける「資産」となり、担当者の説明スキルに依存せず誰でも一定品質で自社の魅力を伝えられるようになります。

ステップ3:顧客情報を「個人のメール」から「会社のデータベース」に移す

デジタルマーケティングで獲得したリードを、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理)ツールで一元管理します。

顧客情報をデータベース化

【現実解のアクション】

リードの一元管理

展示会で交換した名刺、Webからの問い合わせ、ダウンロード履歴などを全てCRMに集約する。

ナーチャリング(育成)の自動化

すぐに商談にならなくても、「特定の資料をダウンロードした人には、関連する事例メールを自動送信する」といった仕組み(MA)を構築し、中長期的に関係を維持する。

商談化の判断基準(スコアリング)

「料金ページを3回見た」「技術資料をDLした」など、顧客のWeb上の行動をスコア化し、熱度が高まったタイミングでインサイドセールスや現地代理店がアプローチする。

属人化解消ポイント: 「誰が、いつ、何に興味を持ったか」という情報が会社のデータベースに残ります。担当者が退職しても、後任者はすぐに引き継ぎが可能になります。

展示会においても「デジタル化」が属人化解消に効く

展示会対応もエース営業の経験に依存していることが多いですが、デジタル基盤があれば変わります。

  • 展示会前:QRコードや事前案内でサイトに誘導
  • 展示会当日:その場でサイトの該当ページを見せながら説明
  • 展示会後:フォローアップメールで共通の情報提供、MAで「そのうち客」を育成

これにより、誰が対応しても一定以上の説明ができ、展示会対応の質を個人から組織へ引き上げることができます。企業によっては、今すぐ客、そのうち客と分けて、そのうち客についてはMA(マーケテイングオートメーション)を活用して対応をするようにしてます。

海外展示会出展案件化に導く3つのポイントでも海外展示会を成功させるための準備について触れています。

海外向けBtoBサイトに落とし込むべき3つのポイント

海外向けBtoBサイト3つの鉄則

① どんな企業・課題からの問い合わせを歓迎するのかを明確にする

想定業界、用途、ロット、対応可能地域などを整理することで、問い合わせの質が揃い、営業負荷を下げることができます。

海外向けサイトの役割は良質なリードを獲得することです。リードタイムの長い製造業の場合、特に顧客の絞り込みは重要です。価格が購買決定要因ではない、自社の優位性の価値を感じて頂ける企業のお問合せを獲得するようにしましょう。

価格以外の購買決定要因で戦うために「価格競争に勝てない」と悩む日本メーカーが世界に伝えるべき7つの価値の記事も合わせて読んでいただだくと良いでしょう。

② 商談前に必ず説明していることをコンテンツ化する

製品の強み、他社との違い、注意点、導入プロセスなどを整理し、商談を「説明の場」から「意思決定の場」へ変えます。

③ 展示会・営業活動と分断しない導線設計を行う

展示会、営業メール、オンライン商談と連動させることで、誰が対応しても同じ情報を届けられる仕組みを作ります。

事例紹介|海外営業の属人化をデジタルで解消した取り組み

産業用コネクタメーカー(ケル株式会社)

海外営業の判断基準や説明内容をWebに整理。展示会・問い合わせ後のフォローでも共通基盤として活用し、属人性低減と営業効率化を実現しました。

ケルさま事例

農業機器・環境機器メーカー(株式会社山本製作所)

海外市場調査と戦略立案から取り組み、海外営業の知見をコンテンツ化。再現性のある海外マーケティング基盤を構築しました。

海外市場調査成功事例

カスタムコネクターメーカー(株式会社グローブ・テック)

英語サイトを軸に製品価値を整理し、問い合わせ対応の効率化と営業負担の軽減につなげています。
海外Webマーケティング成功事例

まとめ

海外営業の属人化は、人の問題ではなく「構造の問題」です。エース営業マンの価値を否定するのではなく、そのノウハウをデジタルに落とし込み、組織の資産に変えることが解決の鍵です。

ポイントを整理すると:

  1. Webサイトをエース営業の分身にする(24時間働く営業マン)
  2. 暗黙知をコンテンツ資産(動画・ホワイトペーパー・FAQ)に変換する
  3. 顧客データをCRM/MAで会社の資産として管理する

私たち世界へボカンは、18年にわたり日本企業の海外進出を支援してきました。社内にはアメリカ、オーストラリア、マレーシア、スペイン、台湾、日本などの多国籍メンバーによる海外Webマーケティング専門チームを擁しています。

旭化成さまをはじめとした製造業の海外マーケティング支援実績も多数あり、エース海外営業のノウハウをデジタルに落とし込み、属人性を抑えながら成果につなげる支援を行ってきました。海外営業の属人化は、人の問題ではなく構造の問題です。私たちは、エース営業の価値を尊重しながら、その知見を組織の資産に変えるデジタルマーケティングをご支援しています。

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