海外マーケティングブログ
「価格競争に勝てない」と悩む日本メーカーが世界に伝えるべき7つの価値
- 2025.07.11
- 海外BtoB

はじめに:価格だけで選ばれる時代は終わった?
「うちの製品、スペックは中国製と同等。でもあちらは価格が半額…。このままだと勝てないのでは?」
製造業やメーカーの方から、こんなご相談を受ける機会が増えています。確かに、中国メーカーはコスト競争力があり、カタログスペックだけを見れば魅力的に映ることもあるでしょう。
しかし、本当に価格だけが選定の決め手になるのでしょうか?
この記事では、日本の製造業が中国製との価格競合にどう立ち向かうべきか、「価格では語れない価値」の伝え方を7つの視点から解説します。
こんな方におすすめ
・海外に販路開拓を検討しているが価格の優位性がなく選ばれにくい商材を取り扱っている
・海外から問い合わせが来るものの成約に繋がらないでお困りの方
・海外から良質な問い合わせを獲得していきたい海外販路開拓担当者さま
目次
- はじめに
- 1.製造業の調達担当者が重視する7つの要素(KBF)
- 2.スペックの“本当の意味”を検証しよう
- 3.長期的なコスト(TCO)で考えてもらう
- 4.知財や機密情報の管理リスク
- 5.トレーサビリティ・ESG対応は日本の強み
- 6.アフターサポートと対応力は価格では測れない
- 7.独自技術を用いた特殊品で勝負する
- おわりに
1.製造業の調達担当者が重視する7つの要素(KBF)
自社が海外進出をする際に全ての顧客に求められる商材を提供できるわけではありません。そのため、顧客購買決定要因(KBF)をベースに、自分たちがどういった顧客に選ばれる可能性があるのかを考えて、発信を行いましょう。
そもそも価格が購買決定要因の企業をどんなに説得しても企業の方針を簡単に変えることはできません。そのため、発信を通して自社の優位性とマッチした購買決定要因を引き寄せるという視点を持つというのも一つの考え方です。
製造業の調達担当者が重視する7つの要素(KBF)
- Total Cost of Ownership(総保有コスト)
製品の購入価格だけでなく、「保守・修理・交換・運用にかかるすべてのコスト」を含めた総合的なコスト。 - Supplier Reliability(サプライヤーの信頼性)
安定した納品・品質・対応が可能か。過去実績も評価対象に。 - Cost Competitiveness(価格競争力)
スペックが同等であれば価格も比較される。ただしTCOとのバランスが重要。 - On-Time Delivery(納期遵守)
必要なタイミングで納品できるか。納期遅延は致命的。 - Technical Support(技術サポート)
導入後やトラブル時の対応力。特に高精度・カスタマイズ品で重視。 - Compliance & Certifications(法令遵守・認証)
ISO・RoHS・REACHなどの国際規格への対応。 - After-Sales Service(アフターサービス)
納品後のメンテナンス・保証・修理対応体制。これらの要素をKBFとして把握し、価格以外の価値をどう伝えるかが鍵です。
2.スペックの“本当の意味”を検証しよう
一見すると「同等のスペック」に見えても、以下のような違いが潜んでいることはよくあります。
・測定方法が異なる(=同じ数値でも実力が違う)
・安定性・再現性がない(=1ロット目はOKでも次はNG)
・材質や耐久性、使用環境での実証が不足している
スペックは
「実地評価」「ユーザー事例」「使用実績」 で裏付けることが重要です。顧客側にも「数字だけで判断しない目」 を持ってもらうための啓蒙が必要です。
3.長期的なコスト(TCO)で考えてもらう
TCOとはTotal Cost of Ownership=総保有コストの略で、製品やサービスを導入、運用、廃棄するまでにかかる全てのコストの合計を指します。
あくまで導入費用はTCOの一部で、ランニングにかかるメンテナンス、修理、サポート、停止、障害時のコストが80%と考えて頂き、トータルで判断頂けると良いでしょう。
調達価格が半額でも、以下のようなコストが発生すれば結局は「高くつく」ことも。
・故障対応・再購入・修理などの保守コスト
・品質不良によるクレーム対応
・安定供給ができないことによる生産ライン停止リスク
Total Cost of Ownership(TCO)=導入後にかかるすべてのコストを算出し、トータルでどちらが得かを冷静に比較してもらいましょう。
項目 | 内容の例 |
---|---|
初期費用(導入時) | 購入価格、設置費用、初期設定、教育トレーニング費用 |
運用費用(使用中) | メンテナンス、修理、サポート、アップデート、運用スタッフの人件費など |
停止・障害時のコスト | 生産ライン停止による機会損失、トラブル対応にかかる人員・時間コストなど |
廃棄・更新コスト | 撤去、処分費用、新製品への移行・切替コスト |
4.知財や機密情報の管理リスク
中国製メーカーに技術図面を渡した結果、模倣品が別ブランドとして流通していたという事例は少なくありません。
- 知的財産保護の意識や制度が不十分
- 納品先がいつの間にか競合になるケースも
日本メーカーは信頼できるパートナーとしての安心感があります。顧客の大切なノウハウや仕様情報を守る体制が整っていることは、大きな差別化要素です。
5.トレーサビリティ・ESGへの対応は日本の強み
最近では、環境・人権・倫理的調達を重視する海外企業が増えています。
- 工場での適切な労働環境
- 環境負荷の低減
- トレーサビリティの確保
近年、あらゆる製造業の製品において、何処で、どのように作られたかを取引先が重視するようになっています。これは、品質の不具合が発生したり、問題が発覚した際にどの工程、部材が問題の原因かを迅速に特定する必要があるからです。
トレーサビリティの中にもいくつか種類があり、自社が何処までトレーサビリティを意識したサプライチェーンを築いているかによって中国・東南アジア企業と闘えるかどうかが変わってきます。
サプライチェーントレーサビリティ
製品の「原材料の調達」から「最終消費者に届くまで」のすべての工程を可視化し、「いつ・どこで・誰が・何を・どうやって」扱ったかを把握できる状態。
プロダクション トレーサビリティ
製品が「いつ、どのラインで、どの作業者が、どの材料・部品を使って、どう製造されたのか」を記録・管理することで、製品単位で製造履歴をたどれる状態のことを指します。
ロジスティクストレーサビリティ
製品が 出荷されてから顧客に届くまでの物流プロセス(倉庫保管、輸送、通関、配送など)を可視化し、どこで何が起きたかを正確にたどれる仕組みのこと。
他にもESGやサステナビリティも企業によっては優位性になります。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉で、企業が長期的に成長するために考慮すべき3つの観点を表します。
これらは中国製メーカーが後れを取っている部分であり、日本の製造業が信頼を得るポイントです。取引先の「コンプライアンス要件」を満たせる体制を明示することが、選ばれる理由になります。
6.アフターサポートと対応力は価格では測れない
中国製品は確かに導入費用は安価ですが、「購入後のトラブル対応」「技術サポートの有無」「意思疎通の速さや正確さ」といったアフターサポートの価格や質はどうでしょうか?
例えば、
・故障や不備があった際のアフターサポート費用
・故障が合った際の修理費用
・その機械を取り扱う際の必要人員数
アフターケアの部分で日本メーカーに軍配が上がるケースが多いです。
・トラブル時にすぐに対応してもらえるのか
・納品後に仕様変更やカスタマイズの相談が可能か
・技術的なフィードバックや改善提案がもらえるか
製品を単に納品するだけではなく、導入の成功まで伴走できるかが、日本メーカーが提供できる大きな価値です。
こういった自社ならではの強みを知るために自社がどういった理由で選ばれたのかを代理店、
顧客にインタビューし、海外でどういったポジションを築いていくべきかのヒントが見つけることが可能です。
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7.独自技術を用いた特殊品で勝負する
製造業の場合、そこまで技術力が要らない「汎用品」と特定の技術がないと作ることができない「特殊品」があります。汎用品に関しては、確かに中国企業に価格の優位性がなく、勝つことができませんが、「特殊品」であれば話が変わってきます。
もし、特定の分野で技術力が高く、汎用品を供給可能なのであれば、海外については技術力を生かした「特殊品」で攻めて行くのも一つの手段でしょう。弊社で支援させて頂いたGLOBETECHさまは、カスタム大電流コネクターという熱伝導率の高いコネクターを取り扱っておりました。
この特殊なコネクターを製造できる企業は、GLOBETECHさまとヨーロッパの企業のみということもあり、熱伝導率の高い、コネクターを求めている世界中の企業から引き合いを獲得することに成功しました。
また、MOQ(最低発注ロット)についても優位性があり、少量で特殊な条件で熱伝導率の高い、コネクターを求めている企業より引き合い、オーダーを頂けるようになりました。
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価格競争ではなく、「選ばれる理由」を設計しよう
価格競争は体力勝負。勝ち続けるには限界があります。しかし、「なぜこのメーカーと取引すべきか」を設計して言語化し、顧客に伝えることができれば、価格以外の軸で選ばれることは可能です。
・あなたの製品の安心・信頼・継続性
・導入後の安定運用に貢献できるパートナーシップ
・長期的視点で顧客の成功に寄与する姿勢
これらを発信していくことで、日本の製造業が再び世界に誇れる存在であることを伝えていきましょう。
「自社の“選ばれる理由”を明文化できていますか? 価格競争に巻き込まれないために、まずは自社の強みをKBFに照らして棚卸ししてみましょう。」
もし、自社が選ばれる理由の言語化や競合・市場調査でご不安な場合は、私たちにご相談ください!
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画像参照元
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